優しさに溢れたイラスト指南書 -みんなのイラスト教室-

読んだ本のこと

今回紹介するのは、イラストレーター中村佑介さんによる「みんなのイラスト教室」。

中村佑介さんという名前を聞いてすぐにわかる人はイラストや絵の世界に繋がりがある人だと思いますが、そうでない人も中村さんのイラストを見たら「あ、知ってる」という人が多いのではないかと思います。

例えば、こんなイラスト。

森見さんの小説カバーイラストの他にも、アジアンカンフージェネレーションのCDジャケットイラストなんかも描かれています。とても特徴のある作風なので、目に入ったらすぐに中村さんの作品だとわかります。

今回私が「みんなのイラスト教室」の本を手に取ったのも、そんな背景がありました。

ツイッターを見ていて、タイムラインで上で頻繁に「四畳半タイムマシンブルース」という本の表紙をよく見かけた時期があり「あ、このイラストはアジアンカンフージェネレーションのジャケットイラストを描かれている方と同じだ」とすぐに気がついたのですが、私自身この時は中村佑介というイラストレーターのことをよく知らなかったので一度ちゃんと調べてみようと思ったのと、ずいぶん以前ですがテレビ番組の中で中村さんがイラストの指南をしていることがあったのを思い出し、「もしかしたら、何かイラストについての本を出版されているかもしれない」と思って調べて見たら、果たしてあった、というわけでした。

 

この本を勧めたい方

本格的に勉強して見たいけどキッカケがなくて躊躇している方

イラストの勉強をしてみたい方

プロのイラストレーターの考え方や描く上でのポイントについて学びたいと思っている方

など、絵を描くこと・イラストを描くことについて興味がある方に強くオススメしたい本です。

その理由は、イラストを描く上でプロが意識してやっていること、考えていることを具体的な絵を通じて感じることが出来ること、プロイラストレーターの絵に対する考え方を学ぶことが出来るからです。

本のページ数はそれほど多く無いのと、絵がふんだんに掲載されているので文字数とさほど多くなくすぐに読み切ってしまえるボリュームなので、この一冊で学べることはイラストの世界で学ぶべきことのごく一部かも知れません。

けれど、プロの技術の凄さ、イラストの面白さをこの価格で感じれるのは凄いことだと思います。

本書の中でも、著者の思いを次のように述べています。

「お金がなくて絵を学べなかった」、また、「興味はあったけど、周りに絵を描く友達がいないから何となく描くのをやめてしまった」、実はそんな人たちの方が、絵の学校に通っている人よりも多いという事実を知ったからです。そして僕は、そんな途中ではぐれてしまい、美大や専門学校の入り口にさえ辿りつけなかった人のための教室を開きたいと思いました。その開講場所がこの本です。」

本の内容ですが、添削形式でイラストのコツなどが具体的に示されていて、非常にわかりやすい。

表紙の楽しそうな雰囲気そのままに、イラストのことをとても楽しく学べます。著者が述べている通り、学びたいけど本格的に学ぶところの手前で止まってしまった人に優しく手を差し伸べてくれるような本です。

 

 

私自身がこの本を読んだ感想について、少し書きます。

教室なので「生徒」がいます。その生徒の作品を中村さんが添削する形で手を加えていくのですが、その添削過程が面白いのです。みるみるうちに絵が魅力的に変わっていく様に感動しました。

生徒さんもそれぞれ真剣に絵を描かれている人たちなので、元の絵の状態でも素人から見たら素晴らしいのですが、中村さんの手によってその絵が持っていた魅力が更に引き出されて一層輝き、絵を通じて伝えたかったことがより鮮明になっていくのです。

色の使い方や配置なども分かりやすく解説されていて、プロイラストレーターの凄さをたっぷり感じ取ることができる内容でした。

また、テクニック的なことだけでなく、絵やイラストについての考え方についても書かれていて非常に参考になります。例えば次のような内容です。

・イラストレーターにとって知名度よりも大切なこと

・描いた絵をたくさんの人に見てもらうために大切なこと

・自分の描く絵に対する劣等感との向き合い方

・盗作というものについての考え方

など。本格的に絵を描く方にとって皆さんが共通して悩むであろうことにも丁寧に解説されています。

そして本書の全編にわたって感じたのは、絵を描きたい人に向けた中村さんの優しさでした。

添削は結構厳しくてビシバシと筆が入るのですが、その接し方は愛情や優しさに溢れていました。

本書を通して、私自身、いっぺんに中村さんのファンになってしまいました。

 

中村さんは、本書の締めくくりで次のように書いています。

ここでの授業をきっかけに、イラストを楽しむ人が増え、100年後、絵を描いている子供たちが教室の隅っこにいなくてもいい環境になっていることを願って、起立、礼、解散。

絵が好きな人が、もっと堂々と絵を好きになってほしい、のびのびと絵を楽しんでほしい。

著者のそんな思いが伝わってくる本です。

一人でも多くの絵が好きな人に、中村さんの思いが伝わって欲しいと感じました。

絵が好きな方、イラストが好きな方は、ぜひチェックしてみてください。

 

以上です。

最後まで読んでいただいてありがとうございます。

 

 

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