苦手を克服するための「100回」という魔法

考えていること

 

誰しも、「自分はこれが苦手だなぁ」と思うことの一つや二つはあるものです。
苦手だけれど克服したい、そんなときにお勧めの実践法をご紹介します。

 

100を基準に挑戦する

藤原和博さんの著書「35歳の教科書」の中で、このように書かれています。

 

「100と決めて取り組むと、物事の本質がつかみやすいのかもしれません。」

苦手なことでも100回実行することを一つの目安に取り組むことで、そのことの本質をつかむことが出来る、結果として苦手なことも苦手ではなくなる、と。

 

私は2013年にベトナムの現地法人立ち上げのため、ホーチミンに赴任しました。
当初は工場長という肩書でしたので、社内組織に向けた活動が主でした。

2015年末に私の上司が先に日本に帰任が決まり、2016年から私が現地法人の法的代表者として仕事に従事することになりました。

現地法人の組織長となったことで、接する人の種類が大きく様変わりしました。
それまで社内組織での活動が中心であったのが、社外の方、とりわけ取引先や顧客の取締役など立場のある方々と面談することが多くなったのです。

これまで社外のいわゆる「偉いひと」とまともに接することなどほぼ無かった私にとっては、そんな方と対峙して話すのは大変神経の磨り減ることでした。

大した実績があるわけでもない私にとって、来客や工場見学の依頼があるたびに気が滅入る思いでした。

対等に話が出来る様にならなければ、と思って肩肘張ってやるものだから、話す内容もなんだかまとまりがなく、それがまた自分自身の負い目となっていく、そんなスパイラルに陥っていました。

先に帰任した上司に「こんなことで大変なんですよ」とこぼしても、上司は「素のままで話せばいいのに。」と言うだけです。
それが出来ないから苦労しているのに、という歯がゆい思いでした。

 

いつまでもこのことで悩みたくなかったので、「もう慣れるしかない」と思い、ある時に一つのことを決めました。

それは「依頼された工場見学はすべて受ける」というものでした。

 

工場は工業団地の中にあるので、工業団地の運営会社から時折「工業団地の視察に来るお客さんに工場を見せてあげてもらえませんか」という依頼は以前からありました。これをすべて受けることにしたのです。

更に、「うちは工場見学の依頼は、基本的に断りませんよ」と工業団地の担当窓口の人に宣言までしました。

 

工業団地の人にとって、工場見学を依頼するのはそれなりに気を使うことだったらしく「それは助かります」と喜んで頂けました。

果たして、工場見学の依頼は目に見えて増えました。

 

工場見学という100本ノック

工業団地を通じで工場見学を希望される方は海外進出を検討してベトナムに来られる方が中心なので、ほとんどの場合が代表取締役社長など立派な肩書の方ばかり。
まさに私が気おくれするような方たちのオンパレードでした。時には大手銀行の役員の方も来られました。

2、3名で来られるときもあれば、バスで乗り付けて10数名で来られるときもありました。場合によっては日本語の通じない方ばかりの時もあり、これは本当に大変でした。

工場見学の場合、大抵のお客様は何か「見たい、知りたい」という想いを持って来られていますので私はとにかく、来られたお客様が「今日は来てよかった、いい情報を得られた」という思いで帰ってもらえる様に、何か一つでも得した気持ちで帰っていただけるようにしよう、これだけ考えて応対していました。

こうしてやってみると分かったことは、

丁寧な気持ちで応対すれば、皆さまが必ず感謝してくださる

ということでした。
国籍や年齢、性別問わず、皆さま誰もが「今日は大変勉強になりました、本当にありがとうございました」と頭を下げてくださるのです。

このことは、私にとって大きな気付きとなりました。
無理に自分を大きく見せようとしたりする必要はなくて、何かを得たいと思ってこられた方に得して帰ってもらえる様に丁寧に応対する、その気持ちだけで良かったんだ、と知ることができました。

また、自分が工場長として社内で実践してきたことを社外の立派な方からほめて頂けることは私自身にとっても大変光栄なことでした。

特に社内の5S活動については、ほとんどの方から「立ち上げ数年でここまで徹底されているのはすごい」とほめて頂くことが出来て、自分がやってきたことは間違いではなかったと認めてもらえたように感じました。

褒めてもらえたことを翌日に社員に伝えると、社員も誇らしげでした。
こうなると私も社員に「褒めてもらえたよ」と言いたい気持ちが一層高まるもので、来られるお客様に自分たちの失敗談も含めて、一層ありのままをお見せしてお伝えするようになりました。

気が付けば、いつの間にか工場見学は私にとって新しいご縁を頂ける貴重な機会としてとてもポジティブな気持ちで受けることができるようになっていたのです。

回数は数えていませんでしたが、数十回の工場見学依頼を通して面談をさせて頂いた社外の方々は100名は既に超えていたと思います。

藤原和博さんの著書には、更にこのようにつづられています。

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1000本ノックでなくても、目標を「100」に設定して物事をとり行うことは有効だと思います。

古くから「お百度参り」という祈願の方法があるくらいですから、100という数字にはご利益があるのかも知れません。結果的に100まで届かなくとも、途中で全体像が観えることが往々にして起こります。

まずは数字を決めてからゲーム感覚で挑戦してみることをおすすめします。

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私は工場見学という経験を通して、「他社の立場のある方々とも、臆せずにありのまま正直に向き合う」ということが出来るようになりました。
これは、「すべての工場見学を引き受ける」という100本ノックがあったからだと言えます。

もしも、この記事を読んで下さった方の中で克服したい苦手なものがある場合は、ぜひ100本ノックを試されることをお勧めします。
回数を重ねるうちに、きっとご自身の中で何かの変化があることに気づかれると思います。

皆様にとって、この記事や私の体験が「自分もやってみようかな」と思われるキッカケになればとても嬉しく思います。

 

以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。