ライフジャーニーのその後

考えていること

 

自己開示の手法として、プレイワークで紹介されていたライフジャーニーの企画のことを以前の記事で紹介していました。

その後も同様にメンバーをローテーションしながら継続して行なっていますが、現時点ではっきりと分かったことがあるので記事にして共有しておこうと思います。

 

ライフジャーニーを続けて分かったこと

結論として、次のことがわかりました。

 

相手への接し方が変わった

それぞれに、今まで知らなかった相手の一面を知ることができたことで、相手との接し方に変化がありました。具体的には、次のようなことです。

 

相手を敬い、相手を大切にしようとする意識が高まった

今まで以上にメンバー同士で話をするようになった

 

メンバー同士が安心してなんでも言い合うことができる感覚を、書籍「プレイワーク」では「心理的安全性」と呼びます。ライフジャーニーを行うことで、職場の心理的安全性が高まったことをはっきりと実感できています。

 

メンバーへの関心が高まった

相手のことをもっとよく知りたいと思う気持ちが強くなったと感じています。

具体的に、スタッフから「これからもライフジャーニーを続けたい」とはっきりリクエストされています。また、次の順番の人がわかると「あの人は、どんなことを話してくれるのかな」と、とても楽しみな気持ちでその人の発表を待っています。

 

それぞれのライフストーリー

 

通訳を入れる時間を考えると、複数人を同じ日に実行するのは時間的にかなり圧迫されてしまうため、1日1人と決めて順番にローテーションするやり方でライフジャーニーを行っています。

1人1人の、これまで知らなかったライフストーリーを聞くことができました。

 

 

あるスタッフは、子供の頃から内向的な性格だったのが、大学に入ってからできた友人の影響でアクティブに動くことで得られることの大きさを知り、自分を変えるキッカケとなったことを話してくれました。

このスタッフは、ライフジャーニーをする直前、とても緊張するだろうと予測して、ライフジャーニーの紙の真ん中に大きく笑顔の太陽の絵を描いて来ました。笑顔のお日様を見ていたら、安心して話せると思ったからだそうです。面白いこと考えるなあと、感心しました。

 

あるスタッフは、会社と家の往復だけでは人生の時間を無駄にしてしまうと途中で気づき、意欲的に勉強の時間を作って自己研鑽をするようになったと話してくれました。影でコツコツと努力することができる、強い意志を持った人なんだと知ることができました。

 

特に印象に残ったスタッフがいました。そのひとは、仕事は完璧主義といってもいいぐらい自分にも他人にも妥協をせず、高いレベルで仕事を進める姿勢が一貫しているのですが、他のスタッフが同じ失敗をした時など非常に感情的に叱責することがあり、「何もそこまで言わなくてもいいんじゃないか」と周りから思われている、もっと正直にいうと、ちょっと怖がられているところのあるスタッフでした。

このスタッフのライフストーリーを聞いて、私の印象は一変しました。幼少期から、経済的に非常に苦しい環境で育ったというこのスタッフは、周囲の同級生から心無い言葉をぶつけられることが多かったそうです。勉強を頑張って良い成績を収めることでしか周囲から認めてもらう方法がなかったという、辛く悲しい過去を経験していたことがわかりました。

一見厳しすぎるように見えるそのスタッフの言動の裏には、過去の自分自身の辛かった記憶と、今、いくらでも頑張れる環境が整っているにもかかわらず頑張ろうとしない人への言いようのない悔しさ、歯痒さがあったのでした。

そして、本人の圧倒的努力による自身へのプライドと人生観には、胸を打つものがありました。

 

こんな風にして、一人一人のこれまでのライフストーリーを聞くことができ、聞いた後はお互い、とても暖かくて穏やかな気持ちで話せるようになったような気がしています。

 

 

 

 

回数を重ねる中で分かったこと

 

自分のことをさらけ出す怖さ

回数を重ねて感じたのは、話す前、ほとんどの人は自分のことを話すことについて恐怖心を感じているということでした。

これは、これまでわざわざ語って来なかった自分のライフストーリーを職場のメンバーに話すことへの不安、ちゃんと受け止めてもらえるだろうかという不安から来るものです。

これまでのメンバー全員そうですが、皆それぞれに辛かった時期を経験していました。そして、誰もが、その辛かった時期のことを頑張って話してくれました。

自分のことを話すのは、とても勇気がいることなんだとよくわかりました。

 

認めてもらえる嬉しさと信頼してもらえる嬉しさ

これも実際やってみると分かることなのですが、聞く側としても、そういうデリケートな過去のことを話してくれると、やっぱり嬉しい。こんな話は、相手を信頼していないとぜったいにできないことですから。相手に「あなたのことを信頼しています」というストレートなメッセージを受け取って、嫌な気持ちになる人なんていないですよね。

話す側も、聞いてもらえた・受け止めてもらえたという嬉しさがあり、聞く側も、信頼して話してくれた嬉しさがある、この嬉しいという気持ちの共有がとても大切なことなんだと思います。

 

ライフジャーニーから得られること

 

元任天堂の社長であった故・岩田聡さんは、生前こんな風に語られていました。

 

会社で働く人は、自分で担当すること以外は仲間たちに任せて、委ねて、起こる結果に対して腹をくくるわけですよね。で、その構造が、規模が大きくなればなるほどより階層的になり、より幅が広がっていく、それが会社というものですよね。

そういうふうに、誰かとつながりながら、何事かを成し遂げようとする時、自分以外の人たち、別の意思と価値観を持って働いている人たちに、「敬意を持てるかどうか」っていうのが、ものすごく大事になってくると私は思ってるんです。

まず、明らかに自分と違う意見の人がいる。それは、理不尽にさえ思えるかもしれない。でも、その人にはその人の理屈と理由と事情と価値観があるはずなんです。そして、その人たちは、自分ができないことをできたり、自分の知らないことを知っていたりする。だから、すべてを受け入れろとは言いませんけど、自分にはないものをその人が持っていて、自分にはできないことをやっているということに対して、敬意を持つこと。

この敬意を持てるかどうかで、働くことに対するたのしみやおもしろみが、大きく変わってくるような気がするんです。

岩田さん:岩田聡はこんなことを話していた。(ほぼ日ブックス)より

 

 

その人なりの理屈と理由と事情と価値観がある。

ライフジャーニーを通じて、その人その人のライフストーリーを知ることで、相手のそういった内面的な部分に触れる、それで、自分とは全く違う意思や価値観を持つ人への敬意を持つことにつながっていくと、そう感じています。

 

お互いが一人一人の、人との違いをきちんと分かる、わかりたいと思う、この気持ちが、組織が本来持っている力を大きく引き出すことへとつながっていくと、確信しています。

ライフジャーニー、ぜひあなたの職場でもやってみませんか。

 

 

以上です。

最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。