地下二階のものづくり人より-あなたの「楽しい」はきっと誰かの役に立つ-

読んだ本のこと

 

 

「丁寧を武器にする」に続いて、パティシエ エスコヤマの小山進さんの本を読みました。

大好きなこと、楽しいこと、目の前にあるやるべきこと、そして未来の自分の理想、これらは必ずつなげることができると小山さんは言います。そのつながりの一本の線を見つけることができれば、きっとその先も成長し続けることができる、それが働くことの本質である、と。

「何のために働くのかわからない」、「やるべきことがわからない」と思う人へ向けて、小山さんの働くことへの想いを表現されている本です。

「楽しい」が誰かの役に立つとはどういうことなのか、探っていきましょう。

 

地下二階でのものづくり

本書には「地下二階のものづくり」という、特有の言葉で表されるものづくりのスタイルがあ登場します。

 

普通の人は、地上一階と地下一階の間を行き来してものづくりをする。

これは、今の世の中のあり方が見えていて、そこに合わせようとして、結果的にオリジナリティのない似たものが溢れることになる。

一方、地下二階の住人は、地上で何が行われていても関係なく、青い空や心地いい風のイメージを大事にしながらものづくりをする。

このように説明されています。

ここだけ読んでも、ちょっとピンとこないかも知れません。

 

地上:現実社会

地下:自分の内面世界

 

私はこのように理解しました。

皆それぞれ、自分の内面において「こんなことができたらいいなぁ」という想いを持っている。けれどもいろいろなしがらみと現実社会の影響を受けながら、思っている通りにはいかない、思っている通りにはできない人がほとんど。

けれど稀に、自分の内面にある想いや衝動のままに、社会からどう思われるかや常識がどうであるかなどを一切気にすることなく、自分のありのままに表現者として才覚を表す人がいます。

そういった、ありのままの自分に正直に生きて社会から認められている人たちのことを、地下二階のものづくり人と表現しているのです。

そう解釈すると、次の一節も非常に納得感があります。

 

すでに書いたけれど、僕は世界一のトロフィーが欲しくてケーキやチョコレートをつくっているわけではない。

そのつくったもので、誰かと誰かが新しい関係を築いたり、対話を生み出すきっかけになったり、自分自身を振り返るようになったり、くじけそうになっている人を激励したり、ということに役立つことが嬉しいだけなのだ。

売れるための地上一階に居るわけではない。

 

世の中はそんな甘くない、そんなふうにいう人もきっと小山さんの周りにたくさんいたことと思います。何よりも小山さんご自身の母親が、小山さんがケーキ屋になることに泣いて反対したと言います。

ただ自分が好きなことだけを考えていたのでは、地下二階のものづくり人になることは出来ないと、社会で実際に働いている人ならわかることです。

自分が好きだと思うことを、誰も真似できないぐらいに高いレベルを目指し、その気持ちに対して一切の妥協を許さず貫き通す強い想いがなければ実現できません。

そして、地下二階のものづくり人は、そのレベルに到達するまでのプロセスさえ楽しんでしまうのです。

このプロセスを楽しむことができるという点に、もしかしたら一つのヒントがあるのかもしれないと感じました。

 

小山さんは、「どこまで自分のクオリティを追求したか」が大事なことだと言います。

 

自分がやるなら、ここまでやらないと気が済まない、という自分のハードルを作ることになるからだ。そのハードルのレベルは、スポーツ選手になっても、職人になっても、サラリーマンになっても、更新し続けることができる。

そうすると、いつか「お前、すごいなぁ!」と他人が認めてくれるステージに立つことができる。褒められることはちょっと照れくさいことではあるけれど、褒められるまで努力することが苦にならない人になっていける。

 

ここで言う、「自分がやるのだから(これぐらいまでは当然到達しなければ)」という視点を自分の中で持っておくことはとても大切なことだと感じました。

 

しかし、そこまでの思いを持てるものが最初からある人は、限られていると思います。

そんな人はどう考えればいいのでしょうか。そのヒントも、本書には書かれていました。

 

自分が何もできないことを心配する必要はない。今、目の前のことを、今までと違うテンションで深掘りすれば、自然に次から次へと自分のやるべきことがわかってくる。自分が変わっていくチャンスは、そうして無限に現れてきているのだ。

 

自分が変わっていくためのチャンスは、いつも自分の目の前にある。

チャンスはチャンスの顔をしてはやってこない、昔に読んだ本に書いてあったことを思い出しました。それがチャンスだと分かるのは、そのチャンスを掴んだ後か、逃した後か、何れにしても向かってきているときは気がつかない。

そのチャンスを掴むことができるのは、いつも心にチャンスを掴む準備ができている人だけ。

つまり、チャンスを掴む心の準備とは

「今、目の前にある自分に与えられた仕事を、情熱を持って丁寧に一つ一つ進めていくこと」

であると、私は思います。

 

あなたの「楽しい」が誰かの役に立つ

働くということは、誰かの役に立つということと同義であると、小山さんは言います。

人の役に立っていると感じることができたなら、きっとそこに幸福感や充実感を感じることができる。そうすることで、自分自身も働くことがもっと楽しくなる。

そうすれば一層、人の役に立つことができるようになる、そんなスパイラルがあると。

 

人の役に立っているかどうかは、自分目線だけでは感じることは出来ません。

そこには、「他者視線」が必ず必要です。

コミュニケーションとは、自分が表現したいことだけ考えて行うのではない、相手がどんなことを考え、どんなことを感じているかを知ろうとすること。

他者視線を持って、楽しみながら仕事をすることができたなら、自分の中での「好きなこと」、「楽しいこと」が生まれ、それがより楽しい働き方、世の中の人と共感し合いながら働くことにつながっていきます。

 

地下二階でのものづくりとは、言い方を変えれば自己実現ができている状態です。

自分にとって地下二階のものづくりとは、どんなことか。

自分の地下二階にはどんな風が吹いているのか、どんな空が広がっているのか。

仕事に疲れてしまった時には、そんなことを考えてみるのもいいのかもしれません。

 

 

以上です。

最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。