「伝える力」と「地頭力」が高まる東大作文

読んだ本のこと

東京大学といえば、大学に進学した人もそうでない人も、ほとんどの人が知っている日本の最高学府です。そんな東大の入学試験、なんとなく「難しいのだろうなぁ」と思うものの、実際にどんな問題が出るのかちょっとピンとこない、そんな方が多いのではないでしょうか。

 

東京大学の入学試験は英語も国語も社会も理科も数学も、すべての科目の回答方式が記述式のため、文章力がなければ入試にパスすることはできません。というのも、東大の入試問題の特徴として著者が言うには、「解くこと自体は比較的簡単だけれど、それを説明するのが難しい」と言う性質があるためです。

「答えは分かっているのに、説明ができないから点が取れない!」という問題が多いそうです。

この本の著者は、本が発行された2019年3月時点で現役の東京大学の三年生。偏差値35から東京大学を目指すも2年連続で不合格、そこから独自の「暗記術」、「読書術」、「作文術」を編み出し、結果的に偏差値70で東京大学に合格を果たしたという経緯を持った方です。

そんな著者の「読書術」とはどんなものか、見ていきましょう。

 

本の要約

東京大学の入学試験で要求される文章力とは、「自分の言いたいことを一方的に書くのではなく、自分の文章を読んだ相手も能動的になれるような、双方向の文章を書く力」です。

自分の考えをしっかり表明しながらも、相手のことを推し量りながら文章を書く、双方向の矢印(自分↔︎読み手)を想定して書くからこそ、相手に伝わる文章になります。

この本では2つのパートに分けて、文章力を鍛えるためのメソッドと、その実践事例が紹介されています。

 

本への質問1:東大作文の作り方とはどのようなものか

東大作文(双方向の文章)を書くためには、守るべきステップがあります。

step1:あとがき作り

書き始める前に、「最後に何を書くのか」を考える。その際、自分が「結局、何が言いたいのか」ということ(主張)、自分の話で「相手にどうなってもらいたいのか」ということ(目的)を最初に考えること。

主張:自分→相手

目的:相手→自分

特に、相手→自分の矢印を作ることで、双方向的で理解されやすい文章になる

 

step2:目次作り

主張したいことの論理(話のつながり)と、相手の状態(主張したいことについて相手がどう考えているか)を正しく把握することで、どのような順番で話をつなげて、どのような順番で相手に伝えるのがベストなのかを考える。そうすることで相手に伝わる文章になる。

 

step3:一人ディベート

読む相手に自分の文章を「説得力がある」と感じてもらう必要があるが、そのためには主張したいことをしっかりと断言することが求められる。断言するためには、自分自身の中でその主張が「本当にこれは正しいことなんだ」と確信していなければならない。自分の中でディベートを行い、主張を断言できるレベルまで練り込む。そうすることで、主張に説得力が生まれる。

 

step4:質問トラップ作り

読む相手に自分の文章を「読みたい」と思ってもらう必要がある。自分の主張に対しての相手からの質問を想定して、相手が「なぜだろう」と思わず質問したくなるような文章を作る。読み手が思わず質問したくなるトラップを仕掛けておき、そのトラップにかかった読み手へ回答する形で、読み手と会話しながら文章を進めていく。そうすることで、読み手を引き込む文章になる。

 

step5:枝葉切り

文章を1本の「樹木」と考えると、文章を構成しているそれぞれの短文は、これまでのステップを次のように分類分けすることができる。

根:目的(読み手にどうなってもらいたいのか)

→文章全体を支える根となる

幹:主張(結局、自分は何が言いたいのか)

→根(目的)とつながりながら言いたいことを伝える文章の主軸となる

枝:目次(話の繋がりと話す順序)

→主張(幹)からどのように枝を伸ばすのが良いかを考える

葉:一人ディベート

→主張(幹)に説得力を持たせるために栄養をまかなう役割を果たす

花:質問トラップ

→樹木の見た目を華やかにして人の興味を呼ぶ

このように文章を分析し、このどれにも分類されない文や、何度も同じことを繰り返して重複している文などを見つけ出して余計な文を削ぎ落とす(余分な枝葉を切る)ことで、読みやすいスマートな文章になる。

 

この5つのStepを経て文章を作ることで、双方向的で相手に伝わる文章が書けるようになります。

 

本への質問2:東大作文はなぜ地頭力を鍛えることに繋がるのか

東大作文の最大の特徴は、複数視点を持って書かれているということです。

自分の言いたいこと(自分の視点)だけではなく、相手が自分の主張をどのように受け止めるか(読み手の視点)の、両方の視点(複数の視点)が考慮されています。

この文章の書き方を鍛えることで、複数の視点で物事を見ることができるようになり、批判的思考力、客観的思考力といった、地頭力を養うことにも繋がっています。

具体的には、東大作文で鍛えられる次の5つの力が、地頭力と伝える力を高めてくれます。

要約力:自分の言いたいことを手短に相手に伝えることができる力

論理的思考力:伝えたい相手に向けて、相手が分かりやすい形で伝える力

客観的思考力:相手の立場に立って物事を考えることができる力

コミュニケーション能力:自分の考えを伝えつつ、相手の考えを読み取り会話を円滑にすることができる力

批判的思考力:自分の文章を批判的にみて、読み手からの批判も想定する力

 

本から得た気づきと行動

ここまでで見てきた通り、「相手にどうなってもらいたいか」や、「相手にとって読みやすい展開、質問したくなる内容」など、読み手の目線を強く意識することで双方向的な文章になるということがよく分かりました。

自分の文章を読む相手はどういう人か、誰に何を伝えたいのかを掘り下げて、その相手にしっかり伝わるようにするための考え方のヒントと具体的な手法が詳しく紹介されていました。

例えばこんなヒントも。

 

人間は、次の3つのうち1つでも満たしていれば、意外と物事を信じてくれます。1つでもいいのです。

1:一人の意見ではなく、客観的な意見であること

2:信じた場合にマイナスが大きくないこと

3:信じることが自分にとってプラスになること

本文より抜粋

 

読めば当たり前と思うことかもしれません。が、実際に自分で文章を書いている時にこれを意識しているかどうか、更に言うと、この内容と逆のことが自分の文章で起きていないか(なんの根拠もない自分の独りよがりの意見になっていないか?毒にも薬にもならないような薄い内容になっていないか?)を意識することで文章の内容は変わってくるのではないでしょうか。

 

また、相手を意識するということに関して、こんな印象的な一節がありました。

 

作文において、八方美人というのは絶対にあり得ません。自分がどこにいるかもわからず、誰に書いているかもわからない状態で文章を書いて、それがどんな人にも伝わる文章になっている、ということは絶対にあり得ません。

自分の立場をブレさせて、誰も彼もに向けた文章を作ろうとしても、結局出来上がるのは誰にも伝わらない文章です。

本文より抜粋

 

どきっとする内容ですが、このことは以前に読んだ本「アマゾンで学んだ!伝え方はストーリーが9割」にも通じるところがありました。「誰に対しても、何でもかんでも、はやめるべき」というものです。

伝えたい内容を、伝わってほしい相手に向けて、相手の顔を思い浮かべながら伝える、これを高いレベルで行うための一つの手法が、東大作文であると言えます。

また、こういうことは意識していないとなかなか身につかないことです。

私自身は自分が読書から得た気づきなんかをTwitterに投稿しているのですが、これは文字制限があるので(140文字)、その制限内にしっかり自分の意見をだす必要があり、結構良い文章のトレーニングになると思っています。

時折、この東大作文を読み返しながら、ひとつひとつの方法を身につけれるように日頃から意識して文章にすることを続けます。

 

 

以上です。

最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。