岩田聡さんの魅力に触れる

読書でアウトプット

 

任天堂の元社長であった故・岩田聡さんが生前に話されていたことを一冊の本にまとめられている本です。

わたしにとって、この本はここ最近読んだビジネス本の中でトップクラスで心に焼き付いた本でした。

岩田さんご自身は本を出版することには全く関心がなかった様ですが、この本から学べることは本当にたくさんあります。あまり認知度は高くない本なのかな、という気がしているのですが、もっともっとたくさんの人に読まれるべき本だと感じています。

 

岩田聡さんがどんな魅力を持った人だったのか、この本には岩田さんのエッセンスがぎゅっと詰め込まれています。

 

※出版されている、ほぼ日刊イトイ新聞のオフィシャルYouTubeチャンネルから、この本の紹介動画が公開されていて、本の雰囲気をとてもうまく表されていました。1分ほどの動画なので、是非見てみてください。

→  YouTube 紹介動画

※本記事のアイキャッチ画像は、こちらの紹介動画より引用させて頂きました

 

 

 

この本を勧める理由

わたしがこの本を勧める理由は、経営者、組織の管理者が持っておくべき資質についてたくさん学べるからです。

この本から学べることは、経営のテクニックという様なものではなくて、EQとか、右脳なんかの、「感じる部分」のところです。

本のタイトルの通り、岩田さんが実際に話していたことを編集して本にされているので、「経営とはこうあるべき」という様な形式のものではなく、エッセイの様な感じで読み進める本です。それでも、インタビューなどで話している時にこぼれ出る、岩田さんの人としての魅力や経営者としてのセンスが随所に光り輝いています。

岩田さんの人柄を感じながら、経営とはこうあるべきと、感じることができます。

 

経営とはつまるところ、何か。

著作家の藤原和博さんが著書で以下の様に端的に表現されていました。

経営とは、管理ではなく、人材を含む諸資源を機動的に配置する編集行為である。

45歳の教科書 著:藤原和博  より引用

 

組織のメンバーの持っているポテンシャルを引き出し、個ではなくチームとしての成果を最大化させること、そのためにはメンバーとマネージャーとの信頼関係がとても大切です。

 

岩田さん。わたしたちはその名前を、つい、呼びたくなってしまいます。岩田さんは、ニコニコ笑いながら今にもオフィスのドアを開けて入ってきそうな気がします。

 

亡くなって今なお、こんな風に語られる。

岩田聡という経営者は、上司部下の関係や、社内、社外を問わず、誰とも信頼関係を作ることが得意な人だったのだとわかります。なぜ岩田さんは信頼関係を作るのがうまかったのか。

探っていきましょう。

 

岩田さんのことば

 

わたしは、自分がどんな会社で働きたいかというと、「ボスがちゃんと自分のことをわかってくれる会社」や「ボスが自分のしあわせをちゃんと考えてくれる会社」であって欲しいと思ったんですね。そして、わたしは「人は全員違う。そしてどんどん変わる」と思っています。

 

従業員が経営者に何を求めているのか、について岩田さんご自身の価値観を語っている部分です。

会社の従業員が経営者に求めているのは、「あなたのことを真剣に考えていますよ」ということを行動や態度で示すことなんだというのを、わたしも自分自身の仕事の中の体験から学んだことがありました。

 

 

わたしが工場長の肩書きから現地法人社長という肩書きに変わってしばらく経った頃のことです。

わたしは工場長をやっていた時ずっと、かなり頻繁に現場に出てオペレーターの方たちと直接会話をしていた方だと思います。それは仕事の指示を出す時もそうだし、ちょっとした雑談をする時も多々ありました。

肩書きが変わって、新しい工場長がわたしの後任として頑張ってくれていたとき、わたしは「自分はでしゃばるべきではない」と思って意図的に現場にあまり出ない様にしていました。

ある時の会社の全体パーティ(3ヶ月に1回の全社飲み会)で、あるテーブルに着いた時に一人の社員から腕を掴まれました。

「なんで最近、全然話しかけてきてくれないんですか!?」

ちょっと怒った風にいうので、わたしはびっくりしてしまいました。

どういうこと?と聞くと、こんなことを言うのです。

 

「前は、残業の時には必ず、疲れていませんかって聞きにきてくれていたのに、最近は全然顔も出さない。本当に冷たい。」

わたしは自分の思い込みで自分は現場に出しゃばるべきでないと思っていましたが、現場の社員は、わたしがあまりに現場に出てこないので「自分たちのことを気にしてくれなくなった」と感じていたのでした。

これはいけないと思い直し、その後からは、可能な限り毎朝、工場全体を回って社員みんなに挨拶をして回ったり、自分の仕事の息抜きのタイミングなどで現場に出て、声かけを再開する様にしました。

 

またある時、別の社員と雑談ミーティングをしていた時のこと。

※わたしの組織では、週に1回20分ほどだけですが、現場サブリーダーと私と人事スタッフで4人ぐらいで机を囲んで真面目に雑談する場を設けていて、雑談ミーティングと呼んでいます

 

もっとも社歴の長い社員の一人が、こんなことを言ってくれました。

「Kiriyamaさんは、優しいとか厳しいとかじゃないけど、いつも私たちのことに関心を持ってくれている。それがすごく嬉しい」

と。

従業員は、経営者との本当に他愛のない会話であっても、それがあることで自分たちに関心を持ってくれていると感じ、それがなくなってしまうと、とても悲しい気持ちになってしまうのだと言うことを、思い知らされた出来事でした。

 

 

余談ですが、わたし、いまよりずっと若いころ、自分がものすごく忙しく感じていた頃に、「自分のコピーがあと3人いればいいのに」って思ったことがあるんです。でも、今振り返ると、なんて傲慢で、なんて視野の狭い発想だったんだろうって、思うんですよ。だって、人はひとりひとり違うから価値があるし、存在する意味があるのに、どうしてそんなこと考えちゃったのかなって、恥ずかしく思うんです。

 

この一節を読んで、金槌で思い切り頭を叩かれたような気がしました。

わたしも、工場を立ち上げた直後や、現地代表の立場になってすぐ後ぐらいの本当に忙しかった時、「自分がもう一人いたら」とか、「あのポジションには、自分の分身を置きたい」とか、そんなことを思っていたし、それどころか、口に出してしまってました。

岩田さんは、自身のことを振り返り、「傲慢で視野が狭かった」と言われます。今わたしは、本当にその通りだと思います。なんと自分勝手で、傲慢で、了見の狭いことか。

この一節を読んだ時、もう恥ずかしくて恥ずかしくて、何も言えなくなってしまいました。

 

 

続くゲームと続かないゲームがある。このことと、いろんな習慣が継続するかということは、すごく似ているんですよ。

共通することは何かというと、人は、まずその対象に対して、自分のエネルギーを注ぎ込むんですね。時間だったり、労力だったり、お金だったり。そして、注ぎ込んだら、注ぎ込んだ先から、何かしらの反応が返ってきて、それが自分へのご褒美になる。そういう時に、自分が注ぎ込んだエネルギーよりも、ご褒美の方が大きいと感じたら、人はそれをやめない。だけど、返ってきたご褒美に対して、見返りが合わないと感じた時に、人は挫折する。

 

実に的確に表現されているなと思います。

人が何かをやめようと思う時、まさにこういう心理が働いています。会社で働く人が、会社をもうやめようって思うときも、同じだと思います。

一生懸命頑張ったのに、思ったより評価されない、見返りが合わない、と感じたとき、もう辞めようって思うのでしょう。管理者は、その心の動きをしっかり理解しないといけない。

ただただ相手に合わせるのではなく、何が相手を失望させているのかをしっかり見て、正しい判断をできるようにしなければならない。相手の気持ちに寄り添いながら、正しい道へ進める様に導いていくのが管理者の役割でもあると思います。

でも管理者も人だから、つい自分の視点で相手を見てしまいがちです。それだけでは正しい判断をすることはできない。

相手は何を頑張ったと思っていて、どんなご褒美があるべきと思っているのかを冷静に見る目も必要です。

 

岩田さんという人は、結局どんな人だったのか

岩田さん本人のことばで、こんな風に言われていました。

 

わたしは、ただしいことよりも、人がよろこんでくれることが好きです。

自分の価値体系のなかには、「まわりの人がよろこぶ」とか、「まわりの人がしあわせそうな顔をする」とかいうことが、すごく上位にあるんですよ。もう、「そのためならなんだってしちゃうよ!」というところがあるんです。

 

人は、正しいことに対して動くのではなくて、自分自身が納得したことに対して、初めて共感するし、動くことができると思います。岩田さんは、そのことを大切にしていたのだと感じます。

仕事の中で正しいことを言うのは、実はそんなに難しくありません。

頭で考えれば、大抵の場合は、何が正しいのかはちゃんと考えれる大人ならわかっているからです。でもそれだけでは、人は動かない。

相手をハッピーにするために、相手が何を欲しがっているのかを全身全霊で考えることが、本当に好きな人だったとわかりました。

 

糸井さんの言葉

 

岩田さんとの繋がりが強かった、著名なコピーライターの糸井重里さんに、岩田さんがHAL研究所の顧問になってほしいとお願いすることがあったそうです。そのときに岩田さんの仕事観について話すことがあったのですが、その場面を振り返りながら、糸井さんはこう言われています。

 

思えば岩田さんはずっとそう言い続けているんだけど、みんながハッピーであることを実現したい人なんですよ。自分がハッピーであること、仲間がハッピーであること、お客さんがハッピーであること。

(中略)

ああ、つまらないことを覚えているもんだなと思うけど、あの、岩田さんってね、「ハッピー」って言うときに、こうやって両手をパーにするんだよ(笑)。こういう風に、「ハッピー」って(笑)。そんなこと、忘れないもんだねぇ。あの日は、良かったな。ふたりっきりで、長々としゃべって。

 

糸井さんが岩田さんのことをどれほどに信頼していたのか、ひしひしと伝わってくる場面です。この部分を読んで、わたしはとても切ない気持ちになってしまいました。

 

まとめ

 

本書から分かったことは、岩田さんと言う人は、優れた経営者である前に、人としての魅力に溢れていた、ということでした。

また全体を通して、岩田さんは「幸せな働き方とは何か」を示してくれている様に感じます。

そしてその考え方は、人と人が協力し合い、なにかを成そうとする限り、いつの時代にも通用する普遍的なものだと感じます。

 

今でもなお、「岩田さん。」と呼びたくなる人。

そんな経営者の元で仕事ができたら、きっと仕事は面白く、素晴らしい仕事人生を進んでいくことができるのではないでしょうか。

 

 

 

以上です。

最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。