世界の秘密へと繋がる扉 -若い人のための10冊の本-

読書でアウトプット

 

「これは秘密の本です」

そんな書き出しから始まるのは、哲学者、小林康夫さんによる本「若い人のための10冊の本」。

タイトルから内容はおおよその想像がつきそうですが、今回記事にして紹介したいと思ったのはこの本がタイトルから連想されるような内容だけにとどまらない、非常に奥深い本だったためです。

どんな本だったのか、早速見ていきましょう。

本の概要

本とは、世界の秘密へと通じる扉の鍵を与えてくれるもの。そして、それは読んだ人の体の一部となり、その人の将来をも変えてしまうぐらいに大きな力を持つもの。でも、一体どんな本を読めば、どんな本の読み方をすれば、そこに到達するのか?

著者が自分自身の読書経験をなぞりながら、それぞれの本が著者にとってどんな意味を持っていたのかを語りつつ、読者に向けて「生きるためのヒント」を伝える本。

 

本書の魅力

この本はタイトルの通り10冊の本を紹介していますが、単純に「記憶に強く残っている、お勧めの本を紹介します」というものではありませんでした。

この本を貫く1つの柱があるのですが、それは次の様に作中で表現されていました。

 

つまり、本を選んで、それを推薦する文を書くのではなく、わたしが、いま、どうしても君に語りたいテーマを先に設定して、そのために本を選んでみるということです。

 

本のタイトルに「若い人のため」とある様に、本書が宛先として想定する読者は、若い人、もう少し具体的には中学生から高校生という10代後半の年齢層の人たちです。

著者は、10代後半の世代に対して次の様に考えていました。

つまり思春期と呼ばれる様な年ごろの若い人だからです。子どもから大人になる時期、ここを通過して社会という共同体の成員になるという時期です。イニシエーション(通過儀礼)とは、その「通過」を試す試験、いや、試煉の儀礼にほかなりません。

これから大人になっていこうとする世代、大人になるために試練の儀礼を受けようとしている世代に向けて著者が語りたいテーマとは何か。

予測できない世界が到来すると言われている昨今、これから大人になっていく世代も、今までの大人が経験したことがない様々な困難を自分で切り抜けていかなければならない。そんな厳しい時代を生きようとする若い世代に向けて、著者が心から語りかけたいことは何か。

このテーマを知り、著者の思いを見つけにいくことに、本書の大きな魅力がありました。

雰囲気だけでも掴んでもらえる様に、目次内容を元にして本書のテーマ概要を紹介します。

・世界と自分

人はなぜ学ぶのか。世界とはどの様なものか。そこに立つ自分とは、どういう存在なのか。世界と自分の間には、どんな関係性があるのか。この2つの存在の間に素晴らしい関係を生むためにこそ、人は学ぶ。

・君のために

これから大人になるに向けて、本格的な孤独を引き受け、人間であることを学ぼうとする君に向けた三つの案内標識。

第一の標識:「死んではいけない」

第二の標識:「性こそもっとも重要な人間の本質」

第三の標識:「他者とともに生きなければならない」

・いろとりどりの世界

言語によって表現される世界とは異なった世界のあり方へと迫る。数理によって表現される法則が司る世界、幻想的な世界、そして私たちが生きる日常の世界へ。

 

著者が哲学者ということもあり、「本とは何か」、「人はなぜ学ぶのか」という様な非常に哲学的なテーマで書かれています。これらは本来、つかみどころがなく難しい内容のはずなのですが、読んでいると全く難しいと感じない、不思議な感覚を覚える本です。

若い人に向けて意図的に平易に書いているということもあると思いますが、それにしても読みやすく、わかりやすく、そして面白い。生き生きとした人生哲学が描かれていました。

 

 

本からの気づき

人に本を勧めたいと思う時、無意識のうちに自分の中で印象に残っている本の記憶を辿っていると思います。本書は、そういうアプローチではなく、伝えたいことが何か、それを伝えるためにはどんな本が良いのかという切り口から書かれているのですが、この様な視点を持っておくのはとても重要だなと感じました。

日常的に本を読む中で、「あ、この本好きだな、あの人に紹介したいな」と思うことはしばしばあるのですが、その心の裏には自分でも気づいていないけれど何か伝えたいと思うテーマがあって、それを伝えるのに分かりやすいものとしてこの本を紹介したい、という心理があるはずです。

「人に紹介したいな」と思ったら、本から入るのではなく、一歩踏みとどまって少し考えて、「自分はこういうことを伝えたいんだな、この本の、この部分を特に勧めたいんだな」と意識を内に向けることを癖づけたいと思いました。

 

で、今回の本を私がなぜ紹介したいのか。

生きることを真剣に考えることは、面白い。

読書経験・人生経験が豊かな、そして生きることの大先輩である著者が、優しく語りかける様に書かれたこの本は、それを教えてくれます。

本ってなんだろう。なぜ人は学ぶのだろう。

ぜひ本書を読んでみてください。素敵な出会いが待っています。

 

 

以上です。

最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。