異界へと続く扉

読んだ本のこと

 

 

 

この広大な世界に関して、人間の知っていることなんてごくごく一部にしか過ぎませんよ

著:朱川湊人私の幽霊 ニーチェ女史の異界手帳 より

 

文明社会がこれほどに発展した今も、この世界には説明がつかないことが沢山ある、小説に登場する博物学者の栖大智(すみか だいち)は、そう言います。

 

確かに世間を見渡せば不思議なことはいくつもあり、何も人類未踏の地に行かずとも、まだ知らない世界は私たちのすぐ側に存在しているのかも知れません。

普段は姿が見えないけれど、なにかのはずみで一定の条件が揃った時にだけ姿をあらわす、異界へと通じる扉のようなものがあるかのようです。

 

この中に収められているのは、そんな異界の扉に触れてしまった人達の物語です。

 

 

怖いと感じることの正体は何か

 

自分が当然だと信じて疑うこともしていなかったことが実は真実ではないと知ったとき、人は怖さを感じるのかも知れません。

 

例えば、昨日の記憶が実は全て作られた記憶で、本当は全く違う事実があったと知らされたら。

 

自分が分からなくなり、心の拠り所が無くなることの不安感、確かに有ると信じて疑っていない地面の足元からすくわれて、知ってるはずなのに全くわからない世界へ飛ばされてしまったような感覚、そこに人ならぬものの存在を感じた時、人は怖れを感じるのではないでしょうか。

 

この瞬間こそが、異界の扉に触れたことでいつもの日常風景から非日常空間へと、世界が塗り替わる瞬間なのだと思います

 

 

思えば私はこういう日常の中に潜む裏の側面や、日常が非日常に少しずつ侵食される感じのストーリー設定が好きみたいです。

 

古いところで言うとデビルマン、比較的新しいところで言うと彼岸島のコミックス1巻から2巻ぐらいにかけての世界観。

ゲームで言えば、スーパーファミコンの真女神転生の序盤なんかも、そんな感じです。(わからない方、すみません)

 

 

もう随分と前に読んだエッセイか、小説か、はっきりと思い出せないんですけれど、読んで知った一つの奇妙な話があります。

この話の奇妙さは、上に書いたような怖さと言えるのかも知れません。

 

それは、こんな話でした。

 

*

 

ある施設の警備を仕事にしている人がいました。

 

夜間警備で施設の廊下にある姿見の鏡の前を通るとき、おかしなものが写る、

ある頃から、そんな話が同じ警備員の仕事仲間の間で噂される様になりました。

 

その人は、半信半疑でしたが、あまり気にしていませんでした。

 

その人が夜間警備の順番になった時にも、そんなことは忘れていつも通り仕事に入りました。

 

くだんの姿見の鏡の近くまで来た時、ふと、その話を思い出しました。

 

本当にそんなことがあるのだろうか

 

恐る恐る鏡をのぞいてみました。

 

写っていたのは、長年見慣れた自分自身の姿でした。

特に変わったところはありません。

 

なんだ、やっぱりただの噂話だった、安心して夜間警備の仕事を終えました。

 

翌日、出勤してきた同僚を捕まえて言いました。

 

昨夜、夜間警備で例の鏡を見たけど、特に変なものは写ってなかったよ、

だからあれはただの噂話だった、と。

 

すると同僚は怪訝な顔をして言いました。

 

なに言ってるんだ、あの鏡は数日前から修理で業者に預けたままじゃないか、

あの場所に今は鏡なんて無いよ、

と。

 

 

*

 

ニーチェ女史の異界手帳には人ならぬものが出てきますが、人ならぬものだからといって人に襲いかかってくるものとは限らず、ただ自分を守ろうとするもの、その命尽きるまで大切な人を守らんとするもの、人の心を救おうとするもの、ただひたすらに自分の本能や使命感のままに動こうとするもの、様々です。

 

そこには人の意思や想いに通ずるものがある、だから、それに触れた時に、人は心を動かされるんですね。

それが状況によって恐怖感だったり愛おしさだったりするんだと思います。

 

この広大な世界に関して人間の知っていることなんてごくごく一部にしか過ぎない、それはきっと本当なんだと思います。

 

 

まだ人間の知らない異界への扉へ

 

この異界の扉に、小説を通してあなたも少し触れてみませんか

 

作中に登場する人や人ならぬもの達の物語の先にあるのは必ずしも怖れや悲しみ、絶滅とは限りません。長い雨が止んだ後にかかった虹を見るような、そんな救いや希望に似たものも、確かにありました。

 

 

是非それらの想いや意思に触れて、あなたが何に心を動かされ、何を感じるのか、体験してみてください。

 

 

 

以上です。

最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。